体幹の安定を求めるなら腹直筋より腹横筋を鍛える必要がある
●腹直筋を鍛えるだけでは不十分
以前は腹部を鍛えるといえば、ボクサーが行っているように仰向けに寝た状態から身体を起こしてくる運動でした。この方法で鍛えられるのは、「お腹が割れる」と表現される腹直筋が中心です。腹直筋は腹部の前壁をなしていて、一番表層にあるのでアウターマッスルといわれています。ボクサーの場合、腹部を打たれる衝撃に耐えなければいけませんので、アウターマッスルは表層で鎧(よろい)の代わりをしてくれます。他にも腹部には側壁に腹斜筋があり、側壁から後壁の深部にはインナーマッスルである腹横筋(ふくおうきん)があります。
これら腹部の筋肉を鍛えるとどのような効果があるのでしょうか。腹部を横から見ると、腹腔(ふくくう)という空間があり、そこに少し柔らかい風船が入っていると想像してください。風船は少し柔らかくても、押さえつけるとパンパンに張りますよね。腹部の風船も前後左右から押さえつけられると張って硬くなります。ヒトの身体で言うと、お腹の前壁には腹直筋、側壁に腹斜筋、側壁から後壁にかけては腹横筋、後壁には背筋群があり、これらが同時に収縮すると風船が張って体幹が安定します。
腹直筋は見栄えが良く、外的刺激から身を守る役割をするのですが、身体を支える役割は少ないのです。ですから身体を支えるためには、側壁に位置する腹斜筋や、側壁から後壁の深層に位置する腹横筋が重要になってきます。特に腹横筋はコルセットの代わりをするともいわれており、体幹の安定には欠かせない存在です。
(「よくわかる股関節・骨盤の動きとしくみ」)
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