立ち上がりにくいのは筋肉だけでなく、骨盤を含めた座位姿勢に原因があるかもしれません。
●座位姿勢と立ち上がりの関係
イスから立ち上がるときに「ヨイショ」と思わず声を出したり、太ももに手を当てたりしないと立ち上がりにくくなったと思うことはありませんか。そうして立ち上がっている方に聞くと決まって「筋肉が弱った」という答えが返ってきます。もちろん加齢による筋力の低下が立ち上がりにくさの原因になると思いますが、姿勢変化も立ち上がりにくくなる原因になることがあります。
年齢を重ねると姿勢が変化してきます。これは立位に限ったことではなく、座位姿勢にも現れます。高齢者の座位姿勢の特徴は、胸椎と腰椎が猫背になり、骨盤が後傾しています。この姿勢では良い座位姿勢に比べて、重心が後方になってしまいます。ここで考えないといけないのは、※支持基底面(しじきていめん)と重心の関係です。立ち上がり姿勢は、支持基底面が座面中心にある姿勢から、足底に支持基底面がある立位に変化するということです。それぞれの支持基底面の間を重心が移動するので、できるだけ短い方が楽です。これは物を近くに運ぶか遠くに運ぶか、その違いだと考えるとわかりやすいと思います。高齢者特有の後方に重心がある姿勢で立ち上がろうとすると、良い座位姿勢から立ち上がるときに比べて、重心の移動距離が長くなります。
このように運動学的に立ち上がりを考えると、骨盤の状態によっても立ち上がりやすさは変わってきます。加齢により筋力が弱っているという考え方もできますが、決して筋力だけの問題ではないのです。
(「よくわかる股間節・骨盤の動きとしくみ」)
※支持基底面
体重や重力により圧を感じることができる身体表面(支持面)とその間にできる底面のことをいう。
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